大判例

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東京高等裁判所 昭和53年(ネ)236号 判決

≪証拠≫によれば、控訴人は、昭和四九年一二月末、村田が控訴人所有の本件刀(一)を処分してやるというので村田に売値を三五〇万円と指定して右刀を預けたところ、村田は、間もなくして被控訴人から右刀を担保にして一〇〇万円位を借り受け、右刀を被控訴人に交付したこと、福岡在住の石岡元治は、控訴人所有の本件刀(二)を処分目的で預っていたが、昭和五〇年一月控訴人から電話で東京にいる村田が右刀を売ってやるといっているから同人に送るよう指示を受けたので、同月一七日、売値を八五〇万円と指定して右刀を村田に航空便で送付した(なお石岡は村田の指示で有賀広美を荷受人として羽田空港止で送ったが、これを荷受したのは村田である)ところ、村田は、間もなくして右刀をさかえ質店に入質してしまい、同月三〇日被控訴人から借りた二五〇万円位を右質店に支払ってこれを取り戻したうえ、被控訴人にこれを交付した(被控訴人は少なくとも立替金の回収をはかる趣旨を含めて受取ったものと解される。)こと、被控訴人は、同年二月一二日、村田と同道して、福岡市に行き中村刀剣交換会で本件刀(一)を金一五〇万円、本件刀(二)を金五一〇万円で売却処分したこと(右売却の点は当事者間に争いがない)、以上の事実が認められ<る。中略>

右によれば、被控訴人は村田とともに昭和五〇年二月一二日本件刀(一)、(二)を福岡市において売却しているところ、本件刀(一)、(二)は控訴人の所有であったもので、村田は控訴人から売却の依頼を受けてはいたものの、自己の金融を得るためこれを担保に供する権限はなかったのに、違法に本件刀(一)、(二)を担保に供したものである。ただ被控訴人にあっては、本件刀(一)、(二)が動産であることから、これを担保に受ける際、善意でかつ過失がなかったときには、即時に担保権を取得するのであるから、被控訴人の前記売却処分行為が違法であるかどうかを判断するには右の点を検討する必要がある。

≪証拠≫によれば、村田の職業は必ずしも明らかでないが、刀剣類を取り扱っている事実があるものの、定まった店舗もないし、さしたる資産もない(特に本件刀(一)、(二)のような一〇〇万円を超えるような刀剣類を購入するだけの資産があるとは認めがたい)こと、被控訴人は、昭和四九年一一月、村田と同道して大阪の控訴人方を訪れたが、その際本件刀(二)が控訴人方店舗にあるのを見ていること、被控訴人は、右大阪や前記福岡のほか長野などにも村田と同道して出掛け、刀剣類の売買をしているばかりでなく、村田が福岡の前記中村刀剣交換会以後行方を暗ましている間も、村田と電話等を通じて連絡を保っており、村田とかなり親密な関係にあることがうかがえること(なお、石岡は昭和五〇年一月一七日本件刀(二)を空輸後、村田から何の連絡もないし、送金もないので、上京し、同年二月八日頃被控訴人の事務所を訪れたが、その際本件刀(二)が同所にあるのを発見し、被控訴人に対し、右刀を村田に空輸した事情及び村田が勝手に入質したものであることを話しているが、被控訴人は右の話を聞いて間もない同月一二日村田とともに東京からわざわざ福岡まで出掛けて本件刀(一)、(二)を処分しているのである)、被控訴人は、本件刀(一)、(二)を受け取る際、いずれの場合も村田に対し同人の右刀の処分権限については何ら質問せず、調査もしなかったこと、が認められ、右に基づけば、被控訴人は、本件刀(一)、(二)を担保にとるに当っては、いずれの場合にも村田の処分権限につき少なくとも疑を持つべきであるのに漫然これを受け取ったのであるから、過失があるというべきである。

そうすると、被控訴人は本件刀(一)、(二)について処分権限がないのにこれを処分したのであるから、右処分行為は違法であり、前記認定したところによれば、右処分行為について被控訴人に少なくとも過失を認めることができるから、被控訴人の右処分行為によって本件刀(一)、(二)の所有権を失うに至った控訴人に対し、その損害を賠償すべき義務がある。

(安岡 内藤 堂薗)

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